過去問の定義と取り組む時期
過去問は、もしもこの年度で受験していればどのような結果になったかを測る唯一の「教材」といえます。ですから、過去問を解き始める時期は慎重に検討しなくてはなりません。受験校の出題傾向や出題レベルは気になるところですが、早くから取り掛かりすぎて散々な結果に終わることもあるため、ある程度学力が備わるまではがまんしましょう。一般的には夏期の講座が終わったあたりで始める人が多いと思います。じっくり学力をあげてから取り組もうと考えている人でも、遅くとも11月までには本命校の過去問には一度以上触れておきましょう。
秋頃になれば、学習量が自然に増え、学習の質も飛躍的に高まった状態で実践的に取り組めます。受験まで半年を切り、本人のモチベーションも高い状態が続いていますし、夏期講習を乗り越え、長時間の勉強にも耐性がついています。過去問をただ解いて終わるだけではなく、分析したりもう一度解き直したりする状況になっています。(そうなっておく必要があります。)塾の定期的なテストや志望校別の模試に加え、過去問の結果は志望校を決定する大きな材料、現実的な路線を示す指標です。ただ、一回やって歯が立たなくても、傾向と対策を練り慣れてくれば五回目で合格点に至るかもしれません。国語という科目は「制限時間内に、上手に本文に存在する答えを探す」教科なので、その学校の傾向を知れば知るほど有利です。敵を知ることで各学校の色が見えてきますので、その色を暴かないまま本番に臨むことのないように注意してください。
取り組み方について
本命校と併願校を交互(1:1)もしくは2:1のバランスで取り組みましょう。本命校→併願校→本命校→本命校(or併願校)の順です。解き終えたらその日のうちに採点をします。記述問題は必ず自己採点させ、その後に第三者も採点して下さい。国語のできる大人であればどなたでも結構です(保護者、塾講師、家庭教師の先生など)。自己採点と違う点数をつけられて答案が返却されるはずなので、自分では大丈夫と思っていたものがバツになりこれでは点数がもらえないのか、という意識が芽生え、ひいては、答案を見てもらう採点者の存在を認識することでしょう。字が汚くて読めない、字が消えていて読めないなどは「減点あるある」なので、講師に採点添削をお願いするときは、相当厳しく採点してもらうようにするといいでしょう。
【過去問に取り組む時の注意点】
✕学力が上がっていない時期から始めてしまう。
→あまりにも点が取れないと、子どものモチベーションを大きく下げてしまう可能性がありますので、手応えを感じるようになるまではあせらず時機を待ちましょう。
✕提出した添削が返ってきていないのに同じ学校の違う年度をどんどん解いてしまう。
→アドバイスを活かさないまま次の過去問にいくのは愚の骨頂です。
✕大問を解いている途中で解くのをやめてしまう。
→まとまった時間に全問解かなければ、過去問に取り組んだ意義が薄れます。
✕時間を引き延ばしダラダラ解いてしまう。
→こちらも同じです。国語は時間配分がすべてです。時間を掛ければ解ける(解けてしまう)問題もあります。小分けにして常に頭がフレッシュな状態で解くことは、過去問演習に関してはマイナスに働きます。やはり大問ごとの設定時間を守らなければ、正しい実力は測れません。
最大効果を発揮するために
①学力のあがり出した9月以降に、直近6年(ないし10年)の一番古い年度から、学校の指定する時間通りに解いてみる
②解き終わったらすべて自分で採点する
(記述部分も予想配点に合わせて自己採点する)
大味な採点はせずに、記述問題は△や✕をしっかりとつけましょう。模範解答の内容(例 AなのでBだからCである。)を細かく要素に分けて、自分の答案内容(例 BだからCである。)も細かく要素に分けて、ひとつひとつ照合します。そこまでして初めて見比べ分析ができたことになります。(例であれば、Aが書けていないことになるので、点数は全体の三分の二とする。)
③本文から根拠を探してやり直す
△や✕を付けられたことを確認出来たら今度はやり直しです。足りていなかった要素(②の例であればA)を本文に求めましょう。必ず自力で答えの場所にたどり着くようにがんばってください。直しがうまくいかなければ、講師に質問に行きましょう。でも、まずは自分でやりましょうね。合格するためにやっているのですから。
④信頼できる講師に添削してもらう。
ここが肝要ですので、長く書きます。今、信頼できる国語の講師と出会えていますか?
子どもだけではなく、子どもと保護者の両名が、です。
信頼できる国語の講師というのは、話が面白い講師、人気のある講師ではなく、読解方法をきちんとその場で教えられる講師のことです。正しい読解方法を習い、正しい添削やアドバイスを受けなければ、まったく成長しませんので、もしそういう講師に出会えていなければ、読み方と(特に)解き方の両方をきちんと説明できる講師を探すことに全力を尽くして下さい。
具体的には、生徒の横で(生徒と同時に)線引きしながら文章整理をの仕方を見せられる、生徒の横で(生徒と同時に)記述を書くところを一部始終見せられる人です。たとえば、模範解答ありきで答えから逆算して教えたり、塾のテストで点数を取らせることに躍起になったりしている講師は避けましょう。塾の講師ではなく、家庭教師の先生を登用する場合も同じです。初回授業時に保護者の方が同じ空間に居られるようにリビングに机を用意して、どのようなスタンスで子供に授業をしているか観察して下さい。授業後に疑問に思ったことを質問して、授業の意図を教えてもらいましょう。そこまでしなくても...と思われるかもしれませんが、そこまでしなくてはなりません。お子様の中学受験は一度きりだからです。
もし、講師が読解方法の説明に終始していない場合やその意図を尋ねてもはぐらかされる場合、そもそも子どもと相性が悪いなと感じた場合は、後悔しないようにいろいろな先生に頼って下さいね。必ず子どもの学力をあげてくれる「いい先生」は存在します。
⑤本命校の添削が返ってくるまでの間に実践演習を積みたければ、別の学校の過去問(併願校)を解いておく
これは上の方でも書きましたが、アドバイスを読む前に次々に過去問を解いてしまうと、過去問の無駄遣いになってしまうので、どうしても実践的な練習を積みたければ併願校の過去問を取り組むようにしましょう。
⑥返却された答案に書かれたアドバイス(解法、本文根拠、自分の採点とのズレ)などをよく理解する
⑦消化(昇華)できたら、次の年度の過去問に取り組む
→①に戻る
上手に過去問を取り扱えば、きっと過去問も想いに応えてくれます。
愛情を持って取り組みましょう。過去問の粗略な扱いは許されません。