中学入試に必要なこと。

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市川中学校 国語 過去問解説 2026年度|合格を手繰り寄せる「記述力」と「対比思考」

市川中学校 国語 過去問解説 2026年度|ピックアップ解説

全体概況と重要度分析

2026年度の市川中の国語は、例年通り「論理的思考力」と「心情の微細な変化を読み取る力」が高いレベルで要求されるセットとなりました。 大問1の論説文は、「能力主義」と「ケアの倫理」という現代社会の重要テーマを扱っており、二項対立の構造を正確に把握する力が問われます。 大問2の物語文は、不登校の娘と両親、そして祖父の関わりを描いた作品で、言葉にならない心情を「動作」や「情景」から読み解く高度な読解力が必要です。 記述問題は字数制限が厳密であり、要素を過不足なくまとめる要約力が合否を分けます。

大問 ジャンル 作品名 著者 重要度 寸評
大問1 論説文 『能力主義をケアでほぐす』 竹端寛 A (必須) 「業績評価主義」vs「ケアの倫理」の対比構造を読み解く。記述問題(問4、問5)での失点は致命傷になりかねない。
大問2 物語文 『雲を紡ぐ』 伊吹有喜 B (合否分岐) 繊細な心情描写が特徴。「沈黙」の意味や小道具の想いを読み取る感性が問われる。問4の記述は難所。
大問3 漢字 C (差がつく) 標準的だが「同音異義語」や「使い分け」に注意が必要。全問正解を目指したい。


大問1:論説文『能力主義をケアでほぐす』(竹端寛)

【推薦コメント】 「頑張れば報われる」「結果を出すことが正義」。そんな当たり前だと思っていた価値観が、子育てや介護といった「思い通りにならない現実」の前で揺らぐ瞬間を描いた、大人こそ読むべき一冊です。中学受験生にとっても、自分の「努力」の意味を問い直すきっかけになる、知的刺激に満ちた文章です。

【あらすじ】 大学教員である筆者は、かつて「業績評価主義」を内面化し、計画的に成果を出すことを正義としていた。しかし、子育てという「ままならぬもの」に直面し、その価値観が崩壊する。筆者は、強さを競う「正義の倫理」から、互いの弱さ(脆弱性)を認め合う「ケアの倫理」へと転換することの重要性に気づいていく。


問1(筆者が考える「業績評価主義」の説明として不適当なものを選ぶ問題)

【重要度:A(必須)】 目標:{絶対に正解したい}

【考え方(超・精細解説)】 筆者が批判的に捉えている「業績評価主義」の定義を問う問題です。 本文の文脈から、「業績評価主義」の特徴を整理しましょう。

  • 特徴1: 数値による評価の絶対主義。
  • 特徴2: 勝ち負けのロジック。
  • 特徴3: 計画的、効率的に成果を出すことを重視。
  • 特徴4: 「努力すれば報われる」という前提(機会の平等を無批判に信じている)。

これらを踏まえて選択肢を検討します。

  • : 「他者より良い評価」「実績を求め続けようとする」 ➡ 本文の内容と合致します。
  • : 「客観的に優れた結果」「努力をしていないのだと見なす」 ➡ 本文の「結果を出せなければ評価されない」という冷徹さと合致します。
  • : 「客観的な成果」「他人より優れた人物だと評価」 ➡ 「勝ち負け」のロジックと合致します。
  • : 「目に見える結果を出せなければ、他人から評価されない」 ➡ 数値評価主義の側面と合致します。
  • : 「自分がどんな状況に置かれたとしても、周囲の期待があるのならば、どんな努力もすることができる」 ➡ ここが誤りです。筆者は、「業績評価主義」は「個人の置かれた環境や脆弱性を無視するもの」として描いています。しかし、「周囲の期待に応えるためにどんな努力もできる」という精神論的な動機づけや、「期待」という他者との情緒的なつながりを重視する点は、筆者が定義する「冷徹な数値評価主義(システムとしての能力主義)」とは少しズレがあります。また、業績評価主義は「結果が出たかどうか」を問うものであり、「どんな努力もできる(プロセスの無限性)」を保証するものではありません。

【解答例(「中学入試に必要なこと。」作成)】

【達人の視点】 「業績評価主義」という言葉のイメージだけで解かず、本文中の「数値による評価」「客観性」「勝ち負け」といったキーワードと照らし合わせることが重要です。イだけが「周囲の期待」という、少し情緒的な要素を含んでいることに違和感を持てるかがポイントです。


問2(「ある種の『契約関係』」の説明として適当なものを選ぶ問題)

【重要度:B(合否分岐)】 目標:{合否を分ける一問}

【考え方(超・精細解説)】 子どものいない夫婦関係が「契約関係」であったという意味を問われています。 該当箇所周辺の記述から要点を抜き出します。

  1. お互いが自律的に動く「大人」だった。
  2. 対話を継続していれば、「維持や修復」はあまり必要がなかった。
  3. 「以前に決めたことだから」で済まされていた。
  4. 予定や予測が崩れることは想定されていない。

つまり、「一度決めたルールや予定は、お互いに守るのが当たり前」という前提で成立していた関係です。

  • ア・イ・オ: 「欲望を制御でき」という表現は「自律」に近いですが、「臨機応変に変えていく」「対話を続けながら」「協力しあえる」という部分は、筆者が「ケアの倫理(子育て)」で必要だと気づいた「柔軟な対応」や「終わりなきプロセス」側の特徴です。「契約関係」のドライさとは異なります。
  • : 「自分がしたいことを主張することが許されている」 ➡ 「契約」は勝手気ままという意味ではありません。
  • : 「夫婦間のやりとりを通して決めたことはおおよそ守られるという前提を共有している」 ➡ これが「以前に決めたことだから」で通用する関係、すなわち「契約関係」の説明として最も適切です。

【解答例(「中学入試に必要なこと。」作成)】

【達人の視点】 この問題は、筆者が「Before(子育て前)」と「After(子育て後)」をどう対比させているかを理解していれば即答できます。「契約関係」はBeforeの状態であり、「予定調和が崩れない」ことが前提です。Afterの特徴(臨機応変、修正、終わりなき対話)が含まれている選択肢を消去法で切っていくと確実です。


問3(自分の欲望が「了見の狭い欲望」に見えてくる理由を選ぶ問題)

【重要度:B(合否分岐)】 目標:{合否を分ける一問}

【考え方(超・精細解説)】 なぜ、かつての「自分の思い通りにしたい」という欲望が「了見の狭い」ものに見えるようになったのか。 その理由は、子育てを通じて「自分一人で完結する欲望」の限界に気づいたからです。

  • 比較の視点:
  • かつての欲望: 自分一人で計画し、完結できる(効率的だが、他者がいない)。
  • 現在の気づき: 娘や妻という「ままならぬ他者」と都合をすり合わせるプロセスこそが、面倒だが「チーム家族」としての一体感を生む。

  • 選択肢検討:

  • : 「迷惑をかけていた」「家族全体のことを考えていなかった」 ➡ 反省の弁としてはありそうですが、「了見が狭い」という表現は、単なる迷惑行為への反省以上の、視野の広がり(自分視点から関係性視点へ)を含意しています。
  • : 「家族全体のことを思いやって行動する責任があるのだと自覚するようになり、子どもが生まれる前の自分は他者の都合をあまり考えずに行動していたのだと気づいたから」 ➡ 本文の「自分一人で完結する欲望だからである」という記述と合致します。他者(家族)という変数を計算に入れず、自分だけで閉じていた世界観を「狭い」と評しています。
  • : 「自分ひとりで家族をまとめられるという考えが誤っていた」 ➡ リーダーシップの話ではありません。
  • : 「家族に嫌われてしまう」 ➡ これは筆者の懸念(愛想を尽かされる)としては書かれていますが、「了見が狭い」と哲学的に気づいた理由としては浅いです。
  • : 「家族の関係が悪化していた」 ➡ 結果論であり、欲望の質の変化に対する説明としては弱いです。

【解答例(「中学入試に必要なこと。」作成)】

【達人の視点】 「了見が狭い」=「自分本位で、他者との関係性が欠落していた」と言い換えることができます。単に「ワガママだった」という道徳的な反省ではなく、「一人で完結する世界から、他者と関わり合う世界への移行」を捉えている選択肢を選びましょう。


問4(「努力する『前提』は平等ではなく、千差万別なのだ」の理由を説明する問題)

【重要度:A(必須)】 目標:{絶対に正解したい}

【考え方(超・精細解説)】 記述問題(40字以内)。 傍線部の直後に、明確な理由が述べられています。

  • 該当箇所: 「本人や家族の経済状況、心身の状況によって、努力の機会の平等は保障されていない」

  • 具体例: 親に経済的余裕がない、ヤングケアラー、条件付きの愛情など。

これらを40字以内にまとめます。具体例を列挙すると字数オーバーになるため、「経済状況」「心身の状況」という抽象化された言葉を使います。

  1. 要因: 本人や家族の経済状況や心身の状況によって、
  2. 結果: 努力の機会の平等は保障されていないから。

これをつなげれば完成です。

【解答例(「中学入試に必要なこと。」作成)】

本人や家族の経済状況や心身の状況により、努力の機会の平等は保障されていないから。

【達人の視点】 ここは「抜き出しに近い要約」です。独自の言葉を探す必要はありません。本文中の重要なフレーズを正確に拾い、文末を「~から。」で結ぶという基本動作を忠実に行えば満点が取れます。


問5(「そのような対話的関係性」について説明する問題)

【重要度:A(必須)】 目標:{合否を分ける一問}

【考え方(超・精細解説)】 記述問題(100字以上120字以内)。 指示内容は以下の3点です。

  1. 「正義の倫理」にふれること(対比)。
  2. 「ケアの倫理」に基づく関係性を説明すること
  3. 本文全体をふまえること

構成メモ:

  • 対比の前半(正義の倫理):
  • 個人の質的差異を無視する。
  • 「強さ」や「勝ち負け」を競う。
  • 業績評価主義。

  • 対比の後半(ケアの倫理=対話的関係性):

  • 人は皆、「環境に左右されやすい脆弱性」を抱えている(平等)。
  • 唯一無二(個別性)の存在である。
  • 自らの弱さを認め、他者に伝え、他者の弱さを理解しようと努める。

これらを論理的に接続します。

  • ドラフト: 個人の質的差異を無視して強さや成果を競い合う「正義の倫理」とは異なり、人は皆、環境に左右されやすい脆弱性を抱えている点で平等な存在だと認識し、互いに自らの弱さを認め、相手の弱さを理解しようと努めることで築かれる関係性。(109字)

推敲のポイント:

  • 「正義の倫理」の説明として「質的差異を無視」「強さを競う」を入れると対比が鮮明になります。
  • 「対話的関係性」の核心は、単に仲良くすることではなく、「弱さ(脆弱性)」を共有の基盤とすることです。このキーワードは必須です。

【解答例(「中学入試に必要なこと。」作成)】

個人の質的差異を無視して強さや成果を競う正義の倫理とは異なり、人は皆、環境に左右されやすい脆弱性を抱えている点で平等で唯一無二な存在だと認識し、互いに自らの弱さを認め、相手の弱さを理解しようと努めることで築かれる関係性。

【達人の視点】 100字を超える記述では、「骨組み(構文)」を先に決めるのがコツです。「Aではなく、Bという認識に基づいて、Cすること。」という型に、本文から抽出したキーワード(脆弱性、唯一無二、質的差異など)を当てはめていくパズルとして捉えましょう。


本文の重要語句

言葉 意味
ままならぬ 思い通りにならないこと。
焦点化 焦点を合わせること。特定の点に集中すること。
内面化 外部の考え方や価値観を、自分のものとして取り込むこと。
応答責任 他者からの呼びかけに応える責任。
業績評価主義 成果や実績を数値化し、それに基づいて評価する考え方。
脆弱性(ぜいじゃくせい) もろくて弱い性質。傷つきやすさ。
一環(いっかん) 全体的なつながりのあるものごとの一部。
隠蔽(いんぺい) 隠すこと。
千差万別(せんさばんべつ) 種々さまざまであること。
虜(とりこ) 心を奪われてしまうこと。
虚勢(きょせい) 実質以上に自分を強く見せようとするうわべの勢い。

☕ 休憩:国語豆知識「ケアの倫理」

本文に出てきた「ケアの倫理」は、心理学者キャロル・ギリガンらが提唱した概念です。従来の倫理学が、正義や権利、ルールといった「男性的な原理(正義の倫理)」を重視しがちだったのに対し、人間関係の維持や他者への配慮、責任といった「女性的な原理」も重要だと主張しました。 筆者はこれを「男=正義、女=ケア」と固定するのではなく、「強さを誇示する社会」から「弱さを認め合う社会」への転換として捉え直しています。現代社会の生きづらさを解く鍵として、注目されている考え方なんですよ。


大問2:物語文『雲を紡ぐ』(伊吹有喜)

【推薦コメント】 「言葉にできない想い」はどうすれば伝わるのか。不登校になった娘、その対応に苦悩する母、そして寡黙な父。バラバラになりかけた家族が、祖父の営む岩手の工房で、色とりどりの「糸」と「布」を通じて再び心を通わせていく物語です。美しい情景描写と、職人である祖父の深みのある言葉が、読者の胸に静かに染み渡ります。

【あらすじ】 高校生の娘・美緒が不登校になり、祖父の住む岩手の家へ家出した。父の広志と母の真紀が迎えに行くが、真紀は口論の末に美緒を叩いてしまう。残された広志と真紀に対し、祖父は「沈黙」の意味を説き、美緒が織った「花瓶敷き」を見せる。その布の感触と歪みから、両親は娘の必死な思いと、自分たちの知らなかった娘の才能に気づかされていく。


問1(真紀が「何か……おっしゃってください」と言った理由)

【重要度:B(合否分岐)】 目標:{合否を分ける一問}

【考え方(超・精細解説)】 美緒を叩いてしまい、親戚に娘を連れ出された直後の場面です。 広志(夫)も祖父も黙り込んでいます。この沈黙に耐えられなくなった真紀の心情を分析します。

  1. 直前の状況: 真紀は仕事のストレスと娘の問題で心身ともに限界(痩せ、ふらつき)。
  2. 夫への不満: 「何を言っても黙りこむ夫」「こちらに歩み寄りを強いる」と感じている。
  3. 自身の罪悪感: 娘に手を上げてしまったことへの動揺。
  4. 祖父への期待: 夫は期待できないが、祖父(広志の父)ならこの重苦しい空気を何とかしてくれるのではないか、あるいは自分を責めるなりなんなり、反応を返してほしい。

  5. 選択肢ア: 「広志にもこれ以上は頼ることができない」 ➡ 夫への諦めと合致します。「何とかしてほしい」という縋るような気持ちも読み取れます。

  6. : 「助けてほしい」 ➡ 悪くはないですが、少し抽象的です。
  7. : 「謝罪の機会を作ってほしい」 ➡ 謝りたいというよりは、この「沈黙」という罰のような時間を終わらせてほしいという切迫感の方が強いです。
  8. : 「直接理由を聞きたい」 ➡ 好奇心ではなく、懇願です。
  9. : 「弁解しても許してもらえないだろう」「優しい言葉をかけてほしい」 ➡ 弁解しようとしている様子や、優しさを求めているというよりは、「反応(言葉)」そのものを求めています。

最も適切なのは、夫への諦めと、この場の停滞を打破してくれる存在としての祖父への依存心を描いた、もしくはに見えますが、解答の選択肢を精査すると、真紀の「孤独感」と「夫への絶望」が背景にあるため、「広志には期待できず、父に何とかしてほしい(状況の打開)」というニュアンスが必要です。 ここで問1の正解は「イ」とされています。 「今後どうしたらよいかわからず不安」「助けてほしい」という、真紀の切羽詰まった無力感に焦点を当てた選択肢です。アの「うしろめたさ」よりも、パニックに近い「不安」が原動力です。

【解答例(「中学入試に必要なこと。」作成)】

【達人の視点】 この場面の真紀は、精神的に追い詰められています。「怒られるかも」という計算よりも、「誰かこの沈黙を破って、私を導いて」という救済を求める心理が働いています。夫(広志)が無力であると認識しているため、その矛先が祖父に向いたのです。


問2(「私、もう疲れた……疲れました」という真紀の心情)

【重要度:A(必須)】 目標:{絶対に正解したい}

【考え方(超・精細解説)】 「疲れた」という言葉の裏にある具体的な感情を特定します。 真紀のセリフ「何を言っても黙りこむ夫……黙ることで相手を従わせようとする……歩み寄りを強いる」が決定的な根拠です。

  • 真紀の認識: 自分は必死に話しかけ、解決しようとしている(歩み寄っている)。
  • 夫と娘の態度: 黙り込むことで、真紀が折れるのを待っている(従わせようとしている)。
  • 結論: 自分ばかりが空回りして、一方的に労力を強いられていることへの徒労感。
  • 選択肢ウ: 「美緒や広志は大事な場面では黙りこみ、何をするにも自分から歩み寄らなければならないため、すべてが空回りしているようでむなしくなっている」 ➡ 本文の記述と完全に一致します。
  • : 「被害者のようにふるまって」 ➡ 少しニュアンスが違います。真紀は彼らを「加害者(支配しようとする者)」のように感じていますが、彼らが被害者ぶっているとは言っていません。
  • : 「自分たちに従わせようとする」 ➡ ここは合っていますが、「悲観的」というよりは「徒労感(疲れ)」です。ウの「空回り」「むなしい」の方が、「疲れた」という言葉の解像度が高いです。

【解答例(「中学入試に必要なこと。」作成)】

【達人の視点】 心情読解では、セリフそのものを「翻訳」する作業が必要です。「疲れた」=「体力の消耗」ではなく、ここでは「一方通行のコミュニケーションに対する絶望」です。「歩み寄り」「従わせる」というキーワードを拾えていれば、迷わずウを選べます。


問3(「言はで思ふぞ、言ふにまされる」と「触ってみなさい」に込められた祖父の意図)

【重要度:C(差がつく)】 目標:{合否を分ける一問}

【考え方(超・精細解説)】 祖父の2つの行動(和歌の引用、花瓶敷きに触れさせる)の意図を統合する問題です。

  1. 「言はで思ふぞ…」の意味:
  2. 言葉に出さない思いの方が、口に出すより強いことがある。
  3. 美緒の沈黙は「拒絶」や「支配」ではなく、「思いが強すぎて言葉にできない」あるいは「辛くて言えない」だけだ。
  4. 「沈黙」の再定義(ネガティブ→ポジティブ/切実なもの)

  5. 「触ってみなさい」の意図:

  6. 言葉は偽れるが、触感は偽れない。
  7. 作品(花瓶敷き)には、美緒の心(脈の速さ、肌の熱、必死さ)が表れている。
  8. 「言葉以外の対話手段」の提示

これらを組み合わせた選択肢を選びます。

  • : 「才能に気付いてほしい」 ➡ 才能も大事ですが、まずは「思い」の理解が主眼です。
  • : 「無理に言わせようとせずに言葉を待ってあげてほしい」「心とつながっている触感を通じて美緒の本質を理解してあげてほしい」 ➡ 祖父のメッセージ(待つこと、触れて感じること)の両面を過不足なく捉えています。
  • : 「人よりも様々なことに気を遣って」 ➡ 祖父はそこまで言っていません。「思いが強い」と言っています。

【解答例(「中学入試に必要なこと。」作成)】

【達人の視点】 祖父は、真紀が囚われている「言葉至上主義(話さなければ分からない)」を解きほぐそうとしています。「沈黙=悪」ではなく「沈黙=深い思い」と捉え直させ、「視覚・聴覚(言葉)」だけでなく「触覚」で娘を感じろと促しているのです。この感覚の転換を理解しているかが鍵です。


問4(「真紀の唇が震えた」ときの心情記述)

【重要度:A(必須)】 目標:{絶対に正解したい}

【考え方(超・精細解説)】 記述問題(100字以内)。 真紀の唇が震えた理由(心情)を説明します。 この直前までの流れを整理しましょう。

  1. 直前の真紀の思い: 「子育てを失敗した女」「美緒のセンスがない(私の育て方のせいかも)」と自信を喪失し、自分を責めていた。
  2. 祖父の言葉: 美緒が幼い頃の絵本から美意識を育んでいたことを指摘。「蒔かれた種は今、豊かに芽吹こうとしている」「見事に育てなさった」。
  3. 変化: 自分の子育ては失敗ではなかった。娘の中に、自分が与えたものが確かに息づいていた。

要素の構成:

  • 過去の認識: 娘の不登校や家出により、自分は子育てに失敗したと自分を責めていた。(マイナス)
  • きっかけ: 祖父から、娘が幼い頃の絵本の影響で豊かな感性を育んでいること、それは真紀が蒔いた種であると肯定された。(転換点)
  • 現在の心情: 自分のしてきたことが報われたことへの安堵、救われた思い、感動。(プラス)

ドラフト: 娘の現状から子育てに失敗したと自分を責めていたが、祖父から、美緒の豊かな感性はかつて自分が与えた絵本によって育まれたものであり、見事に育てたと肯定されたことで、張り詰めていた心が解け、救われたような思い。(100字)

【解答例(「中学入試に必要なこと。」作成)】

娘の現状から子育てに失敗したと自分を責めていたが、祖父から、美緒の感性はかつて自分が与えた絵本によって育まれたものであり、見事に育てたと肯定されたことで、張り詰めていた心が解け、救われたような思い。

【達人の視点】 「唇が震える」は、通常は「悔しさ」か「感動(感極まる)」のどちらかです。ここでは文脈から明らかに後者。特に「見事に育てなさった」という承認の言葉が、真紀の呪いを解いた決定打です。「失敗感からの解放」と「承認による安堵」をセットで記述しましょう。


問5(広志の人物像について適当なものを選ぶ問題)

【重要度:C(差がつく)】 目標:{捨て問でもOK}

【考え方(超・精細解説)】 広志の「えっ? 俺に聞くの?」という発言から人物像を読み取ります。 この発言は、真紀と祖父がシリアスに美緒の作品について対峙している中で、少し間の抜けた、しかし正直な反応です。

  • 広志の特徴:
  • 沈黙に耐えられず窓の外を見る(繊細さ、あるいは逃避)。
  • 「和歌の下の句だよ」と知識を披露する(博識だが、場違いな冷静さ)。
  • 「俺に聞くの?」と当事者意識が薄い(ように見える)。
  • しかし、真紀に「よくわかります」と同意し、夫婦の絆を感じて声をかける(優しさ、彼なりの気遣い)。

  • 選択肢ア: 「他人の発言に不用意に答えてしまう、少し頼りない人物」 ➡ 「不用意」というよりは、彼なりに真面目ですが、真紀たちの深刻な感情のやり取りから一歩引いている(あるいはついていけていない)「頼りなさ」があります。これが最も近いです。

  • : 「無責任な人物」 ➡ 茶化しているわけではありません。
  • : 「情に厚い」 ➡ どちらかというと淡泊で、少しズレている人物として描かれています。

【解答例(「中学入試に必要なこと。」作成)】

【達人の視点】 広志はこの物語において、深刻になりすぎる真紀と頑固な祖父の間で、少し「緩衝材」のような、あるいは「蚊帳の外」のような立ち位置にいます。悪気はないが、真紀の切迫感とは温度差がある「頼りなさ」を読み取れれば正解できます。


本文の重要語句

言葉 意味
切々(せつせつ) 心を込めて訴えるさま。
淡々(たんたん) こだわりがなく、あっさりしているさま。
嗜める(たしなめる) 反省するように注意する。
献上(けんじょう) 目上の人に物を差し上げること。
無為(むい) 何もしないでぶらぶらしていること。
無類(むるい) 比べるものがないほど優れていること。
目を肥やす 多くの良いものを見て、識別する能力を高める。
感応(かんのう) 何かに触れて心が動くこと。

☕ 休憩:国語豆知識「和歌とコミュニケーション」

本文に出てきた「言はで思ふぞ 言ふにまされる」という和歌。これは「言葉に出して言うよりも、心の中で思っていることの方がずっと深い」という意味です。 昔の日本人は、あえてすべてを言葉にせず、「察する」ことを美徳としていました。現代はSNSなどで「言葉」が溢れていますが、この物語のように、時には「沈黙」や「物」に込められたメッセージに耳を澄ませることが、本当の理解につながるのかもしれませんね。


大問3:漢字の書き取り

【重要度:C(差がつく)】 目標:{全問正解}

漢字問題は、文脈に合った適切な語句を漢字に直す力が問われます。

  1. 字のイドウを調べる ➡ 異同(違いと、同じところ)。※「移動」ではないので注意!

  2. カホウは寝て待て ➡ 果報(運が良いこと)。

  3. オーケストラのエンソウ演奏

  4. キュウフの対象 ➡ 給付

  5. 命あってのモノダネ物種(物事の根本)。

  6. エイセイ面に注意 ➡ 衛生

  7. エンジュクした演技 ➡ 円熟(人格や技術が十分に熟達すること)。

【達人の視点】 「異同」と「移動」、「給付」と「寄付」など、同音異義語の使い分けがポイントです。「物種」は慣用句を知っているかが問われました。


プロ国語科講師の総評:合否を分けたポイント

今年度の問題は、大問1、大問2ともに「他者との対話の難しさと、それを乗り越える方法」がテーマでした。 大問1では「弱さを認め合うこと」、大問2では「言葉以外の感覚で相手を感じること」。この共通テーマに気づけた受験生は、記述問題でも深い解答が書けたはずです。

【君が次にやるべきアクションプラン】

指導者への相談 記述問題、特に大問1の問5(対話的関係性)や大問2の問4(真紀の心情)は、自己採点が難しい問題です。「要素は足りているか」「論理がつながっているか」は、君の性格や書き方の癖を知っている先生に見てもらうのが一番です。「この記事ではこう書いてありましたが、僕の解答はどうですか?」と相談し、プロのフィードバックをもらってください。それが合格への最短ルートです。


国語の「映像化」が苦手な子への処方箋

「物語文の情景が浮かばない」「登場人物の気持ちに入り込めない」。 そんな悩みを持つお子様には、「耳からの読書」というトレーニングが劇的な効果をもたらすことがあります。

文字を目で追うことに必死で、脳内でイメージを作る余裕がない状態(デコーディングの負荷が高い状態)から、一時的に解放してあげましょう。プロのナレーターが感情を込めて読み上げる「声」を聴くことで、脳内に自然と「映像」が浮かぶ感覚を掴ませるのです。

この「映像化」の回路が開くと、活字に戻った時も、文字から情景を立ち上げるスピードが格段に上がります。今回の『雲を紡ぐ』のような繊細な物語こそ、まずは「音」で味わってみてください。


市川中学校の過去問解説シリーズ

chugakujyuken.hateblo.jp


【解説のスタンスと免責】 本記事は、入試問題を徹底的に分析・研究するプロフェッショナルが作成した「学習補助資料」です。学校公式の模範解答ではありません。解き方は一つではありませんので、塾の先生の指導も尊重してください。最終的な正誤判断は必ず過去問集等でご確認ください。 ※「著作権」に配慮し、問題文(本文)は掲載していません。入試本番の空気感を再現するためには、過去問集などの原典にある「実際の紙面」で文章を追う経験が不可欠です。お手元の過去問集と照らし合わせながらご覧ください。

🏆 中学受験を勝ち抜く「親の武器」

① 過去問は「実寸大」が鉄則

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② 辞書引きの「速さ」が合格を分ける

限られた勉強時間の中で、紙の辞書を引く時間はロスになります。類語・対義語・成句まで一瞬で繋がり、語彙のネットワークを広げるには「受験生専用モデル」が必須です。
【必須】カシオ エクスワード(小5-中3)


③ 国語の偏差値は「多読」で決まる

国語が苦手な子の原因は圧倒的な「語彙不足」です。本を買うスペースも費用も気にせず、入試頻出作品を読み放題(聴き放題)にする環境が、読解力の土台を作ります。