市川中学校 社会 過去問解説 2025年度|第1回|厳選ピックアップ解説
2025年1月20日に実施された市川中学校・第1回入試。社会科の試験(40分・100点満点)は、例年通り「歴史」「地理」「公民」の各分野から、高度な資料読解力と論理的思考力を問う構成となりました。
合格のために重要だったポイントは、「統計資料の異常値から背景を推測する力」と「歴史的事実の因果関係を言語化する記述力」です。単なる用語の暗記だけでは太刀打ちできない、市川らしい「思考の質」が問われています。
2025年度 第1回:出題構成と合格へのマイルストーン
| 大問 | 分野 | 内容の要約 | 合格への重要度 | 寸評 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 歴史 | 日本における仏教の広がりと政治 | 極めて高い | 律令制下の戸籍の矛盾を突く記述が勝負所。 |
| 2 | 歴史 | 日本の民主主義の歩み | 高い | 近現代史の細かな正誤判定で差がつく。 |
| 3 | 地理 | 千葉県の地理と産業 | 標準 | 千葉県に関する知識と人口ピラミッドの分析。 |
| 4 | 公民 | 現代社会の諸課題(給食費無償化等) | 合否分岐 | グラフから社会構造の変化を読み取る力が必須。 |
- 市川中学校 社会 過去問解説 2025年度|第1回|厳選ピックアップ解説
- 大問1:歴史(仏教の広がりと社会)
- 大問2:歴史(日本の民主主義)
- 大問3:地理(千葉県の産業と人口)
- 大問4:公民(現代社会とデータの分析)
- プロ社会科講師の総評:合否を分けたポイント
- 市川中学校の過去問解説シリーズ
大問1:歴史(仏教の広がりと社会)
日本における仏教の受容から近世までの変遷を辿る問題です。特に、律令制度の崩壊過程をデータ(戸籍)から読み解く問題は、市川中学校が好む「史料分析」の典型例と言えます。
問1(文中の空欄にあてはまる歴史的背景の選択)
【重要度:A(必須)】 目標:絶対に正解したい
【考え方(超・精細解説)】 各時代の仏教と政治の関わりを正確に把握する必要があります。
- 空欄①(奈良時代): 聖武天皇の時代を想起してください。鎮護国家の思想に基づき、仏教の力で国家の安定をはかろうとした時期です。
- 空欄③(平安末期): 院政期は、上皇による仏教保護が手厚く、都周辺に多くの寺院や神社が建立された時期(六勝寺など)に該当します。
- 空欄⑤(室町時代): 浄土真宗(一向宗)や日蓮宗など、民衆にわかりやすい教えを説く新しい仏教が広まった結果、権力者に対抗する組織へと発展しました。
【解答例(「中学入試に必要なこと。」作成)】 ①:オ、③:イ、⑤:カ
問4(10世紀の戸籍における人口構成の矛盾と理由)
【重要度:B(合否分岐)】 目標:合否を分ける一問
【考え方(超・精細解説)】 表1の「阿波国の村の戸籍」を冷静に分析すると、生命科学的にあり得ない数値が並んでいます。
- 男女比の異常: 合計人数を見ると、女性(308人)が男性(42人)に対して極端に多いことがわかります。
- 年齢構成の異常: 80歳〜100歳以上の高齢者が多数記載されていますが、当時の平均寿命を考えると不自然です。
なぜこのような「嘘の戸籍」が作られたのか? その理由は、当時の重い負担にあります。
- 租・調・庸などの税や、兵役・雑徭(労役)は、主に成人男子に課せられていました。
- 人々はこれらの負担を逃れるため、役所に対して「うちは女ばかりです」「もう死にそうな老人ばかりです」と偽りの申告(偽籍)を行ったのです。
【解答例(「中学入試に必要なこと。」作成)】 実態に合っていない点①:女性の人数が男性に比べて不自然に多くなっている点。 実態に合っていない点②:当時の寿命では考えにくい高齢者が多数記載されている点。 理由:成人男子に課せられた重い税や労役、兵役などの負担から逃れるために、偽りの申告を行ったから。
問6(江戸時代の経済政策の順序と人物)
【重要度:B(合否分岐)】 目標:合否を分ける一問
【考え方(超・精細解説)】 江戸中期の経済政策は、以下の順序で展開されました。
- b:徳川綱吉(貨幣の質を落として財政再建を試みた。元禄貨幣)。
- c:新井白石(正徳の治。金銀の流出を防ぐため海舶互市新例を出す)。
- d:田沼意次(株仲間の推奨や長崎貿易の拡大で商業資本を利用した)。
- a:水野忠邦(天保の改革。物価高騰を抑えるため株仲間を解散させた)。
問題は「3番目にあたるもの」を求めているため、d(田沼意次)が正解となります。
【解答例(「中学入試に必要なこと。」作成)】 ク(d・④)
☕ 休憩:社会豆知識「偽籍の知恵」
今回の問題に出た「偽籍(ぎせき)」。実は、あまりに多くの農民が「女です」と言い張ったため、記録上は女性だらけなのに、実際に行ってみるとガッシリした体格の「自称・女性」たちが田植えをしていた……なんていう滑稽な光景が広がっていたと言われています。生きるための必死な知恵だったのですね。
大問2:歴史(日本の民主主義)
明治から戦後までの「人々の権利」と「議会政治」をテーマにした大問です。
問2(自由民権運動における「議会」の必要性)
【重要度:C(差がつく)】 目標:合否を分ける一問
【考え方(超・精細解説)】 資料1(指導者側)と資料2(農民側)では、同じ「議会(国会)」を求めていても、その動機が異なります。
- 指導者(士族など): 国民が国家の運命を議論する場を設けることで、国民意識を高め、近代国家を形作ることを重視しました。
- 農民: 松方デフレなどの経済政策によって生活が苦しくなったため、減税などの自分たちの要求を政府に直接届ける場として期待しました。
【解答例(「中学入試に必要なこと。」作成)】 X:議会 理由:指導者は国民が議論に参加して国運を考える場として必要だと考えたのに対し、農民は生活の苦しさを訴え、減税などの要望を政府へ伝える場として必要だと考えたから。
問4(青鞜社と女性解放運動)
【重要度:A(必須)】 目標:絶対に正解したい
【考え方(超・精細解説)】 「元始、女性は実に太陽であった」というフレーズは、中学入試における超頻出キーワードです。平塚らいてう(雷鳥)が雑誌『青鞜』の創刊号に寄せた言葉であり、大正デモクラシー期の女性運動の象徴です。
【解答例(「中学入試に必要なこと。」作成)】 平塚らいてう
問7(安保闘争と岸信介内閣)
【重要度:B(合否分岐)】 目標:合否を分ける一問
【考え方(超・精細解説)】 1960年のデモ写真から、日米安全保障条約(安保条約)の改定をめぐる混乱を読み取ります。
- 首相: 岸信介(安倍晋三元首相の祖父)。
- 背景: 衆議院での強行採決に対し、「民主主義の危機」を感じた人々が大規模なデモ(安保闘争)を起こしました。
【解答例(「中学入試に必要なこと。」作成) ア:岸信介、イ:安保
☕ 休憩:社会豆知識「新幹線の父、下村長信」
岸信介内閣の後に登場した池田勇人内閣は、「所得倍増」を掲げて国民の目を経済に向けさせました。その象徴が1964年の東京オリンピックと東海道新幹線です。実は新幹線の構想自体は戦前からあり、当時は「弾丸列車」と呼ばれていました。歴史の「点」がつながる瞬間です。
大問3:地理(千葉県の産業と人口)
千葉県の県庁所在地である市川市にちなみ、千葉県の特徴を深く掘り下げる内容です。
問3(人口ピラミッドから見る印西市の成長要因)
【重要度:B(合否分岐)】 目標:合否を分ける一問
【考え方(超・精細解説)】 2000年と2020年の比較において、特に30〜40代と15歳未満(子ども)の層に注目します。
- 2020年のグラフでは、30〜40代のボリュームが厚くなっており、それに伴って子どもの数も維持または微増しています。
- これは、千葉ニュータウンなどの開発により、子育て世代が他の地域から転入してきていることを強く示唆しています。
【解答例(「中学入試に必要なこと。」作成)】 30代から40代の子育て世代の人口が増加しており、それに伴い子どもの数も増えていることから、周辺地域から子育てに適した環境を求めて若い世代が移住してきていることがわかる。
問5(鉄鋼業の原料と輸入船の判別)
【重要度:A(必須)】 目標:絶対に正解したい
【考え方(超・精細解説)】 千葉県(京葉工業地域)の主軸である鉄鋼業についての知識です。
- 原料: 鉄鉱石。
- 輸入先: オーストラリア(ブラジルと並ぶ二大輸入先)。
- 貨物船: 鉄鉱石は非常に重いため、専用の「ばら積み船(鉱石専用船)」で運びます。写真キは、蓋(ハッチ)がついたバルクキャリアの特徴を捉えています。
【解答例(「中学入試に必要なこと。」作成)】 原料の一部:イ、輸入先:エ、貨物船:キ
大問4:公民(現代社会とデータの分析)
給食費の無償化を切り口に、日本の格差社会と少子化問題を考察させる、非常にメッセージ性の強い問題です。
問4(1)世帯年収分布の変化から読み取れる社会背景
【重要度:C(差がつく)】 目標:差がつく一問
【考え方(超・精細解説)】 グラフの「小学生の子どもがいる世帯」の変化を分析します。
- 上昇している層: 年収900万円以上の高所得世帯。
- 下落している層: 年収500万円未満、特に300万円未満の低所得世帯。 ここから導き出される結論は、「経済的な余裕がある世帯だけが子どもを持てるようになり、余裕がない世帯は結婚や出産を断念せざるを得ない状況(少子化の二極化)」が進んでいるという厳しい現実です。
【解答例(「中学入試に必要なこと。」作成)】 小学生の子どもがいる世帯では、年収900万円以上の割合が大きく増加する一方で、500万円未満の割合が減少している。このことから、経済的に余裕のない世帯が結婚や出産を控える傾向が強まり、高所得層に子育て世帯が偏ってきていることが考えられる。
プロ社会科講師の総評:合否を分けたポイント
今年度の市川中入試は、「不自然なデータに違和感を抱き、その裏にある社会の歪みを指摘できるか」という点が合否の分かれ目となりました。 特に、大問1の戸籍の問題と大問4の年収分布の問題は、どちらも「表やグラフの形そのもの」に答えが隠されています。知識を詰め込むだけでなく、目の前の数字が語る「物語」を読み取る訓練が必要です。
友達との議論:今日からできるアクションプラン
この出来事の「原因と結果」について、友達とクイズを出し合ってみよう。例えば、「なぜ昔の人は戸籍で嘘をついたと思う?」という問いから、当時の税制の厳しさを議論する。アウトプットすることで、歴史の流れは頭に深く刻まれます。
暗記が苦手な子への処方箋
社会科の成績が良い子は、歴史を「点」ではなく「線(物語)」として記憶しています。テキストの文字だけで覚えようとせず、歴史小説や解説本を耳から聴いて「全体の流れ(因果関係)」を把握しておくと、年号や人名が驚くほど頭に入りやすくなります。
まずは無料体験で、入試によく出る時代の歴史小説や解説を聴き流すことから始めてみてください。勉強している感覚なしに、歴史が得意科目へと変わります。
市川中学校の過去問解説シリーズ
- 市川中学校 社会 過去問解説 2024年度
【解説のスタンスと免責】 本記事は、入試問題を徹底的に分析・研究するプロフェッショナルが作成した「学習補助資料」です。学校公式の模範解答ではありません。解き方は一つではありませんので、塾の先生の指導も尊重してください。最終的な正誤判断は必ず過去問集等でご確認ください。 ※「著作権」に配慮し、問題文・地図・統計表は掲載していません。入試本番では資料の読み取りが勝負を分けます。お手元の過去問集の資料をじっくり観察しながらご覧ください。

