2025年度のフェリス女学院中学校の社会科は、例年通り「資料読解力」と「歴史的・社会的背景の深い理解」が合否を分ける鍵となりました。単なる知識の暗記では太刀打ちできない、情報の関連性を問う良問が並んでいます。
覚え方や語呂合わせは塾で習ったものを最優先しましょう。この記事は、その知識を「生きた知恵」に変えるための「最強の副読本」です。
大問1:鉄道の歴史と日本の産業・社会
今年の大問1は、廃止された鉄道路線を切り口に、明治期の鉱業から現代の物流問題(2024年問題)までを縦断的に問う構成でした。特に「なぜその変化が起きたのか」という因果関係を正確に把握しているかが試されています。
問1(h):北海道の貨物輸送停止が本州に与える影響についての記述
【難易度:B】 目標:合否を分ける一問
【考え方(超・精細解説)】 北海道と本州を結ぶ物流網の寸断が、私たちの食生活にどのような直撃を与えるかを論理的に組み立てる必要があります。
- 産地の偏り: 北海道は日本最大の食料供給基地であり、ジャガイモやタマネギなどの農産物において圧倒的なシェアを占めています。
- 輸送の代替性: トラック輸送の運転手不足(2024年問題)がある中で、大量輸送を担う鉄道(貨物列車)が停止することは、物理的な輸送量の激減を意味します。
- 市場への影響: 本州の消費地へ農産物が届かなくなれば、供給不足による価格の高騰や、食卓の欠品を招くことになります。
【解答例(「中学入試に必要なこと。」作成)】 北海道は農産物の主要な産地であり、貨物輸送が止まることで本州への供給が滞り、食生活や物価に大きな影響を及ぼすため。
問1(k):特定の地域に集中して激しい雨を降らせる気象現象の名称
【難易度:A】 目標:絶対に正解したい
【考え方(超・精細解説)】 近年の自然災害において頻出する用語です。次々と発生した積乱雲が列をなし、数時間にわたってほぼ同じ場所に猛烈な雨を降らせる現象を指します。
- 発生のメカニズム: 湿った空気が流れ込み続け、積乱雲が線状に並ぶ。
- 社会への影響: 鉄道の線路流出や土砂崩れなど、交通インフラに甚大な被害をもたらす要因となっています。
【解答例(「中学入試に必要なこと。」作成)】 線状降水帯
問1(o):輸送手段をトラックから鉄道や船舶へ転換する取り組みの名称
【難易度:B】 目標:絶対に正解したい
【考え方(超・精細解説)】 環境問題(二酸化炭素排出削減)と物流の2024年問題(運転手不足)の両面から注目されている政策的用語です。
- 環境負荷の軽減: トラックに比べ、鉄道や船舶は一度に大量の荷物を運べるため、1トンあたりの排出ガスを大幅に抑えられます。
- 労働力の効率化: 長距離ドライバーの負担を減らすため、長距離区間を鉄道や船に任せる流れが加速しています。
【解答例(「中学入試に必要なこと。」作成)】 モーダルシフト
| 輸送手段 | 長所 | 短所 |
|---|---|---|
| トラック | 戸口から戸口への配送(柔軟性) | 運転手不足、CO2排出量が多い |
| 鉄道 | 定時制、大量輸送、環境に優しい | 駅から駅の輸送に限られる |
| 船舶 | 最も低コストで超大量輸送が可能 | 速度が遅い、港に限定される |
☕ 休憩:社会豆知識「消えた鉄道と硫黄の役割」
今回の問題に登場した北海道の硫黄輸送。明治時代、硫黄はマッチの原料や火薬の材料として、日本の重要な輸出資源でした。しかし、石油精製の過程で不純物として硫黄が回収されるようになると、わざわざ山奥の鉱山から掘り出す必要がなくなり、多くの「硫黄鉄道」が姿を消しました。技術の進歩が風景を変えた一例ですね。
大問2:通貨の歴史と社会の変遷
大問2は「お金」をテーマにした歴史分野です。富本銭から現代の新紙幣発行まで、貨幣が社会にどのような影響を与えたかを考察させます。
問1(b-②):新千円札の肖像に女性(北里柴三郎以前の津田梅子など)を採用する偽造防止上の利点
【難易度:C】 目標:合否を分ける一問
【考え方(超・精細解説)】 これは知識というよりも、資料や社会背景から推察する力が求められるフェリスらしい問題です。
- 肖像画の役割: 紙幣に人物の顔が描かれる最大の理由は「人間は顔のわずかな違和感に気づきやすいから」です。
- 技術的な難易度: 一般的に女性の肖像は、男性(ヒゲやシワが多い)に比べて線が細く、肌の質感を表現するために極めて精密な印刷技術が求められます。これが偽造の壁となります。
【解答例(「中学入試に必要なこと。」作成)】 女性の肖像は男性に比べて顔のシワやひげが少なく、偽造を防ぐために繊細で高度な印刷技術が要求されるから。
問1(d):江戸時代の参勤交代が都市の経済を活性化させた理由
【難易度:B】 目標:絶対に正解したい
【考え方(超・精細解説)】 参勤交代は幕府が大名を統制するための制度ですが、結果として莫大なお金が動く仕組みを生みました。
- 移動のコスト: 多人数の行列を引き連れて往復する旅費。
- 滞在のコスト: 江戸の屋敷での生活費や維持費。
- 経済の循環: これら全ての費用は、街道沿いの宿場町や江戸の商人たちに支払われ、都市経済を潤すことになりました。
【解答例(「中学入試に必要なこと。」作成)】 大名が江戸への往復に要する旅費や、江戸での生活に多額の費用を費やしたことで、宿場町や江戸の商業が盛んになったため。
問1(j-②):1930年代に満州(中国東北部)への移住者が増えた背景
【難易度:B】 目標:合否を分ける一問
【考え方(超・精細解説)】 当時の世界情勢と国内の経済状況をリンクさせる必要があります。
- 世界恐慌の直撃: 1929年以降、日本も深刻な不況に陥りました。
- 農村の窮乏: 特に農村部では農産物価格の暴落により生活が破綻する人々が続出しました。
- 新天地としての満州: 政府は失業者や生活に困窮した農民に対し、広大な土地が得られるという期待を持たせて満州への移住を推し進めました。
【解答例(「中学入試に必要なこと。」作成)】 世界恐慌の影響で国内、特に農村部が深刻な不況に陥り、多くの失業者や生活困窮者が出たことで、新天地を求めたため。
☕ 休憩:社会豆知識「世界最古のお金?」
日本最古の貨幣といえば、長く「和同開珎(708年)」とされてきましたが、近年の調査で「富本銭(683年頃)」がより古いことが判明しました。教科書が書き換わる瞬間を私たちは生きているわけです。常に「最新の常識」にアップデートしておくことが、社会科では重要です。
大問3:世界の選挙と民主主義の課題
大問3は、2024年が世界的な「選挙イヤー」であったことを背景に、民主主義の根幹を問う公民分野の出題でした。特にインドの選挙制度や、現代特有の「情報リテラシー(ディープフェイク対策)」に焦点を当てている点がフェリスらしい「社会の動きに敏感な視点」と言えます。
問a(グローバル・サウスに含まれない国)
【難易度:A】 目標:絶対に正解したい
【考え方(超・精細解説)】 「グローバル・サウス」とは、主に南半球に位置するアジア、アフリカ、ラテンアメリカの新興国・途上国の総称です。これは単なる地理的な区分ではなく、政治的・経済的な立場を示す言葉です。
- グローバル・サウスの国々: インド、ブラジル、南アフリカ、マレーシアなど。これらは経済成長が著しく、国際社会での発言力を強めています。
- グローバル・ノース(先進国): アメリカ、イギリス、日本、オーストラリア、ニュージーランドなど。地理的に南半球にあっても、経済水準が高く西側諸国の一員であるニュージーランドは「グローバル・サウス」には含まれません。
【解答例(「中学入試に必要なこと。」作成)】 ウ(ニュージーランド)
問b(選挙権の歴史と資料読解)
【難易度:B】 目標:合否を分ける一問
【考え方(超・精細解説)】 提示されたイギリスと日本の選挙権拡大の年表と有権者割合の推移を、冷静に読み解く力が試されます。
- 19世紀の実情: 表を見ると、イギリスの1832年時点での有権者割合はわずか4.5%、日本も1889年(大日本帝国憲法発布時)は1.1%に過ぎません。
- 制限選挙: 当時は「一定額以上の税金を納める男性」にしか選挙権が与えられていませんでした。つまり、国民の9割以上(女性、労働者、貧困層)の声は政治に届かない仕組みだったのです。
- 選択肢の検討:
- ア:2015年の改正(18歳選挙権)で増えたのはわずかな若年層であり、30%も急増したのは1945年の「女性参政権獲得」の時です。
- イ:イギリスで男女平等(年齢制限なし)になったのは1928年です。1918年時点では女性は30歳以上という制限がありました。
- エ:上記の通り、19世紀はごく一部の特権階級による政治でした。
【解答例(「中学入試に必要なこと。」作成)】 エ(19世紀の選挙制度では、国民全体の声が政治に反映されなかった。)
問d(野党の重要な役割についての記述)
【難易度:C】 目標:合否を分ける一問
【考え方(超・精細解説)】 「選挙で負けた政党(野党)に何の意味があるのか?」という、民主主義の本質を問う記述問題です。多数決はあくまで「決め方」の一つであり、多数派が常に正しいとは限りません。
- 権力の監視: 与党(政権担当政党)が暴走したり、国民に不利益な政治を行ったりしないよう、常にチェックし批判する「ブレーキ役」が必要です。
- 多様性の反映: 選挙で与党に入れなかった国民(少数派)の意見も、議会での議論を通じて政策に取り入れる必要があります。野党は「声なき声」の代弁者としての機能を持っています。
【解答例(「中学入試に必要なこと。」作成)】 多数決で選ばれた与党の政策を監視・批判し、行き過ぎを正すとともに、少数派の意見を政治の場に反映させる役割。
問e(偽情報を見極める行動の名称)
【難易度:A】 目標:絶対に正解したい
【考え方(超・精細解説)】 生成AIの発達により、本物と見分けがつかない「ディープフェイク」が拡散される現代において、必須となる情報リテラシー用語です。
- 情報の検証: インターネット上の情報や画像が「本当に真実か」「誰が何のために発信したか」を、公的機関の発表や複数のニュースソースと照らし合わせて確認する作業を指します。
【解答例(「中学入試に必要なこと。」作成)】 イ(ファクトチェック)
☕ 休憩:社会豆知識「投票用紙の素材の秘密」
日本の選挙で使われる投票用紙、実は「紙」ではありません。「ユポ」というプラスチック素材でできています。あの独特のツルツルした手触りには理由があり、折り曲げても箱の中で自然に「開く」性質があるのです。これにより、開票作業の際にいちいち手で開く手間が省け、集計スピードが劇的に速くなっています。世界に誇る日本の「時短技術」ですね。
プロ社会科講師の総評:合否を分けたポイント
2025年度のフェリス女学院社会は、例年以上に「因果関係の言語化」と「現代社会とのリンク」が重視されました。
- 知識の「運用力」: 「硫黄鉱山」や「参勤交代」といった基本知識を、単なる暗記で終わらせず、「なぜ廃線になったのか?」「なぜ経済効果があったのか?」というロジックまで落とし込めているかが記述の出来を左右しました。
- 資料の「観察眼」: 北里柴三郎の業績や選挙権の推移など、リード文や図表に隠されたヒントを拾い上げる探偵のような観察力が求められています。
合格へのアクションプランとして、今回は以下を提案します。
- 保護者への説明: 今日の夕食の時にでも、「なぜトラック輸送から鉄道輸送への切り替え(モーダルシフト)が進んでいるのか」、お家の人に教えてあげましょう。大人を唸らせる先生役をやるのが、知識を定着させる一番の勉強法です。
【解説のスタンスと免責】 本記事は、入試問題を徹底的に分析・研究するプロフェッショナルが作成した「学習補助資料」です。学校公式の模範解答ではありません。解き方は一つではありませんので、塾の先生の指導も尊重してください。最終的な正誤判断は必ず過去問集等でご確認ください。 ※「著作権」に配慮し、問題文・地図・統計表は掲載していません。入試本番では資料の読み取りが勝負を分けます。お手元の過去問集の資料をじっくり観察しながらご覧ください。

