中学入試に必要なこと。

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【中学受験】夏休み、国語で“本当に”すべきこと。最難関校の合否を分けるポイントとは

6年生にとって、夏休みは天王山。 受験本番まで残り半年となり、この期間の過ごし方が合否を大きく左右することは、多くのご家庭がご存知の通りです。

特に、後回しにされがちな「国語」。 算数や理科と違って勉強の成果が見えにくく、「センスだから仕方ない」と諦めかけてはいないでしょうか。

しかし、最難関校の入試において、国語が合否のカギを握るケースは決して珍しくありません。そして、国語力を本当に伸ばすために必要な、じっくりとした学習時間を確保できるのは、実質的にこの夏が最後です。

今回は、最難関校の国語で求められる力と、この夏に親子で取り組むべきことについて、冷静に整理していきたいと思います。

 

なぜ、夏に「国語」なのか?

 

秋からは、志望校の過去問演習や分野別の総仕上げが本格化します。その段階で、「文章の読み方そのものが分からない」「記述の書き方が定まっていない」という状態だと、演習の効果は半減してしまいます。

つまり夏休みは、過去問という「応用問題」に挑むための「土台」を固める、最後のチャンスなのです。ここで正しい読み方・解き方の「型」を身につけられるかどうかで、9月以降の伸びが全く変わってきます。

 

最難関校が求める「国語力」の正体

 

「うちの子、塾の模試では平均くらいは取れるのに、志望校の過去問になると急に点が取れない…」 そう感じる場合、それはお子さんに「センス」がないからではありません。最難関校が求める、特殊な国語力に対応できていないだけです。

具体的には、以下の3つの力が問われます。

1. 文章の「本質」を見抜く読解力 最難関校では、大人が読んでも唸るような、抽象的で深いテーマ(文化、未知、好奇心など)を扱った文章が出題されます。ただ字面を追うだけでなく、筆者が本当に伝えたいことは何か、文章全体の構造はどうなっているかを、客観的に把握する力が必要です。

2. 設問の「意図」を正確に捉える思考力 なぜ、この部分に傍線が引かれているのか。なぜ、記述に字数指定がないのか。一つひとつの設問には、必ず「出題者の意図」が存在します。その意図を正確に読み取り、「何を」「どのように」答えれば得点になるのかを論理的に考える力が、合否を分けます。

3. 根拠を「組み立て直す」記述力 特に差がつくのが記述問題です。「本文の要素を抜き出して、つなぎ合わせる」だけでは、高得点は望めません。本文中にある複数の根拠を的確に探し出し、設問の要求に合わせて、自分の言葉で分かりやすく「再構築」する。この高度な情報処理能力が不可欠です。

 

この夏、家庭でできる「3つのこと」

 

では、これらの力を伸ばすために、夏休みに具体的に何をすれば良いのでしょうか。塾の課題に加えて、ぜひ意識してほしい3つのアクションをご紹介します。

① まずは「敵」を知る 〜志望校の過去問を眺めてみる〜

いきなり解く必要はありません。まずは親子で志望校の過去問(数年前のものでOK)を一度、眺めてみてください。 「随筆が多いな」「詩が出るんだ」「記述の量はこのくらいか」 どんな文章が扱われ、どんな形式で問われるのか。志望校の「個性」を知るだけで、今後の学習の目的意識がぐっと明確になります。

② 「自分の答案」を分析する 〜なぜ減点されたのかを言語化する〜

これまで受けた模試や塾のテストで、点数が伸び悩んだ記述問題はありませんか。その答案をもう一度、お子さんと一緒に見てみてください。 「何を書けば点数になったんだろう?」 「解答解説と、自分の答えは何が違うんだろう?」 「この言葉は、本当に本文に書いてあったかな?」 「なぜ減点されたのか」を親子で話し合い、理由を言葉にしてみる。この「分析」の作業こそ、次につながる最も効果的な学習です。

③ 「感覚」から「論理」へ 〜読み方を意識的に変えてみる〜

文章を読むとき、「なんとなく」で読み進めるのをやめてみましょう。 例えば、

  • 接続詞(「しかし」「つまり」など)に印をつける

  • 対比されている言葉を線で結ぶ

  • 段落ごとに簡単な見出しをつけてみる

こうした一手間を加えるだけで、文章が持つ「論理構造」が目に見えるようになります。国語は感覚の科目ではなく、構造を読み解く技術の科目なのだと意識することが、すべての始まりです。

 


 

国語力は、短期間で劇的に上がるものではありません。しかし、正しい方法で、じっくりと時間をかけて向き合えば、誰でも必ず伸ばすことができます。

慌ただしく過ぎていく夏休みですが、どうか「国語と向き合う時間」を大切にしてください。この夏、お子さんの答案の中に「なぜだろう?」を見つけ、それを解決する手助けをしてあげること。それが、秋以降の飛躍につながる、何よりのサポートになるはずです。